研究内容

細胞膜は主に、グリセロリン脂質、コレステロール、スフィンゴ脂質で構成されている。 スフィンゴ脂質は多様性に富み、スフィンゴミエリンや様々な糖が付加した糖脂質が含まれる。 これらスフィンゴ脂質はコレステロールなどと共に細胞膜上でマイクロドメインを形成し、シグナル伝達経路の場として働くと考えられている。 また、スフィンゴ脂質の代謝産物のいくつかのものはシグナル伝達分子として働く。 当研究室ではその中でもスフィンゴシン1-リン酸 (S1P)、セラミド1-リン酸 (C1P) の様々な生体機能における役割の解明、細胞内動態の解明を目指して研究を行っている。

■研究の概要

S1P 受容体を介した S1P のシグナル伝達: S1P は細胞表面に存在する S1P/Edg ファミリー (S1P1/Edg1、S1P3/Edg3、S1P2/Edg5、S1P4/Edg6、S1P5/Edg8) と呼ばれる G タンパク質に共役した 7 回膜貫通型受容体に特異的に結合することにより、細胞内の-様々な応答を引き起こす(Ca2+ 動員、DNA 合成誘起、MAP キナーゼの活性化、cAMP 濃度の増減など)。 我々はこれら受容体の活性、エンドサイトーシス、リサイクルの調節機構について解析を行なっている。
C1P の生理機能の解明:C1P はセラミドキナーゼによって生成される脂質で、近年新たに見つかったセラミド代謝産物の一つである。 我々は、セラミドキナーゼが、カルシウムによって活性化され、マスト細胞の脱顆粒の放出に深く関与することを明らかにした。 我々は、C1P の生理機能の解明を通して最終的には、長年の謎であるセラミドの細胞内での働きに迫って行きたいと考えている。
スフィンゴ脂質の動態:S1P は活性化された血小板から放出される。また細胞は培地中のスフィンゴシンを取り込んで、スフィンゴ脂質に変換する。 これらの輸送にはトランスポータータンパク質が関与している。我々は動物細胞を用いた細胞生物学だけでなく、酵母遺伝学を用いてこれらのトランスポーターの同定、解析を行っている。 我々は既にスフィンゴイド塩基を特異的に細胞外へ排出するトランスポーター Rsb1p を酵母において同定している。
その他スフィンゴ脂質合成、代謝に関わる酵素の解析:我々の研究室では新規の酵素として、ヒト S1P ホスファターゼ hSPP2、 3−ケトジヒドロスフィンゴシンレダクターゼ FVT-1の同定に成功し、解析を行っている。また最近同定されたセラミド合成酵素 LASS ファミリーの解析も行っている。